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2019年7月29日(月曜日)

プラスチックごみ削減の国際的な取り組み – バーゼル条約とマリーン・イニシアティブ

プラスチックごみ規制に関する経緯

2017年後半に世界最大規模の廃棄ごみ輸入国であった中国が外国ごみの輸入禁止を決定したことで欧米のごみの行き先がなくなり、その流れの中、EUは2018年5月にプラスチックごみ抑制のために使い捨てプラスチック使用禁止の計画を発表、今年2019年5月に法案が採択された。

※EUでの使用禁止プラスチックの対象品目は、 生分解性プラスチックなどで代替可能な、綿棒スティック、風船のカトラリー、ストロー、マドラー、食品・飲料容器など10種類の使い捨てプラスチック及び釣り用品となっている。

EUの計画発表とほぼ同時期の2018年7月、 米コーヒーチェーン大手スターバックスがいち早く2020年までに全世界の2万8千以上の店舗でプラスチック製の使い捨てストローを廃止すると発表したことで、日本でもプラスチック廃棄物削減が一挙に注目を浴びるようになった。その後、外食、小売、食品メーカーを含む日用品メーカー等のプラスチック削減の取り組みが次々に発表された。

汚れたプラスチックごみ輸出規制提案採択-バーゼル条約改正 2021年発効

日本が1993年に加入した有害廃棄物の輸出入を制限する「バーゼル条約」 は、正式には「有害廃棄物の国境を越える移動の規制およびその処分に関するバーゼル条約 (Basel Convention on the Control of Transboundary Movements of Hazardous Wastes and their Disposal) 」 という。

2019年5月10日、「バーゼル条約」の締約国会議において、汚れた廃プラスチックを規制対象に加える改正条約が採択された。プラスチックごみによる海洋汚染が国際問題となる中、日本がノルウェーと共同提案し、スイス・ジュネーブで開かれていた同会議で協議していた。規制は2021年1月に発効する。

バーゼル条約は締約国に対し、有害廃棄物を原則国内で処理し輸出する際は相手国の同意を得ることなどを義務付けており、日本は廃プラスチックのうち、飲み残しの入ったペットボトルや食べ物汚れが付着したプラスチック容器、土の付いたビニールシートなどを規制対象に加えることを提案した。 

バーゼル条約第 14 回締約国会議の結果の概要(環境省)より引用

大阪ブルー・オーシャン・ビジョン実現のための 日本の「マリーン(MARINE)・ イニシアティブ」

バーゼル条約改正の採択を受け、日本政府は関連省令の改正や運用指針の策定を進め、2019年6月に大阪で開かれた20か国・地域(G20)首脳会議において、環境対策で存在感を示した。

G20大阪サミット(令和元年6月28-29日)にて共有された、海洋プラスチックごみによる新たな汚染を2050年までにゼロにすることを目指す「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」の実現に向け、安倍総理は同サミットにおいて、日本は途上国の廃棄物管理に関する能力構築及びインフラ整備等を支援していく旨を表明した。 

そのため日本政府は、①廃棄物管理(Management of Wastes),②海洋ごみの回収(Recovery),③イノベーション(Innovation),及び④能力強化(Empowerment)に焦点を当てた、世界全体の実効的な海洋プラスチックごみ対策を後押しすべく、「マリーン(MARINE)・ イニシアティブ」を立ち上げる。同イニシアティブの下で具体的な施策を通じ、廃棄物管理、海洋ごみの回収及びイノ ベーションを推進するための、途上国における能力強化を支援していく。

食品メーカーの取り組み

日本の食品メーカーは、従来の食の安心安全に加えて、プラスチック削減など環境対策にも積極的に取り組んでいかなければならなくなった。現在まではトップ企業の取り組みが注目を浴びていたが、食品は消費者に直結する産業のため、成り行きを見守っていた企業も今後は避けては通れないこととなる。

プラスチック削減の取り組みは始まったばかりで、生分解性プラスチックなどの技術がプラスチック削減の方向性を大きく変えるかもしれない。


本記事は、Algolynx Business Sphere®が収集する情報から構成しています。 記事の内容については、発表元のソースをエビデンスとし、出来るだけ正確な情報の積み上げに努めていますが、 一部筆者の個人的な考察に基づいて書かれています。

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