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2019年7月1日(月曜日)

工業由来のトランス脂肪酸に関する最新トピック(2019.6)

引用元:WHO 世界的なトランス脂肪除去に関する報告2019(表紙)

WHOによるトランス脂肪酸削減努力に関する年次報告書

2019年5月19日、工業由来(部分水素添加油脂)のトランス脂肪酸に関して、WHO(世界保健機関)から 初のトランス脂肪酸の削減努力に関する年次報告書「report-on-tfa-elimination-2019(世界的なトランス脂肪除去に関する報告2019)」が発表された。

これは、昨年2018年にWHOが加盟国に呼び掛けた、“2023年までに世界から工業由来のトランス脂肪酸を完全排除”するという行動指針「REPLACE」計画の進捗報告の位置づけとなっている。

※「REPLACE」 : REview(各国政策評価)、Promote(健康な油への代替促進)、Legslate(規制措置)、Assess(含有および消費量の評価)、Create(健康影響認識の形成)、Enforce(規制の遵守と強制)を定めたWHOの指針。

今回の報告書によれば、2018年以降に6カ国が工業的に生産されたトランス脂肪酸の規制を始めた他、欧州連合(EU)加盟国を含む24カ国が今後2年以内に発効する規則を採択するとしている。しかし現在も、110カ国はトランス脂肪酸の規制を行っておらず、世界の50億人が過剰摂取のリスクにさらされているという。 

日本のトランス脂肪酸政策

日本においては、2011年(平成23年)2月21日に消費者庁より「トランス脂肪酸の情報開示に関する指針」が発表され、食品事業者がより安全な食品を消費者に提供するため、自主的なトランス脂肪酸削減とトランス脂肪酸を含む脂質に関する情報を開示する取組を進めるよう要請が出されている。

これに従い、乳製品・油脂メーカー等多くの食品企業がホームページ上で自社のトランス脂肪酸に関する考え方と取り組みを公開している。

海外のトランス脂肪酸政策

対して海外では、法令でより厳しい規制を強いる動きが活発化しつつある。

今年2019年1月に、ASEAN諸国では初となる、タイがトランス脂肪酸に対する禁止令を発効した。また、2019年6月6日には、シンガポール保健省が、2年後の2021年6月から国内の使用を全面禁止にする旨を発表した。

他に、禁止もしくはそれに近い規制(厳しい上限値設定など)を発効しているのは、他にカナダ、ラトビア、スロベニア、アメリカがある。また、既に審議が通過して今後規制発効が予想される国として、EU(23か国)、ペルー、サウジアラビア、ウルグアイが続く。

また、現在コーデックス委員会では、栄養・特殊用途食品部会で“トランス脂肪酸フリー表示”に関して議論がされている。ただし、各国での産業の思惑や消費者の状況も異なるため、議論は進んでいない。

トランス脂肪酸に関する企業のケア

日本では、トランス脂肪酸の摂取が海外より比較的少ないこともあり、それほど消費者の話題に上がっていない。(週刊誌などが菓子パンのトランス脂肪酸含有量をたまに取り上げている程度)

しかしながら、トランス脂肪酸は直接的なマーガリンやスナック類等だけでなく、原料が含まれる可能性のある全ての食品に関係している。

現在、日本の食品企業の多くが海外展開や輸出を活発化させており、対象となる国で厳しい規制や表示が規せられた場合、考慮しなくてはならない重要な課題となる可能性が高い。


本記事は、Algolynx Business Sphere®が収集する情報から構成しています。 記事の内容については、発表元のソースをエビデンスとし、出来るだけ正確な情報の積み上げに努めていますが、 一部筆者の個人的な考察に基づいて書かれています。

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